【自分でも満額回収できる!】過払い金請求訴訟の手順と方法
過払い金を取り戻すには、訴訟をして解決する方法と訴訟をしないで解決する方法の2パターンがあります。裁判をしない交渉の場合は貸金業者は過払い金の返還額を低めに提示してきて、なかなか納得のいく金額まで過払い金の返還額を上げてきません。そこで、最終手段として裁判という方法をとると結果的に自分でも過払い金を満額回収できたり、裁判を起こさない交渉よりも多く回収できる可能性があります。
訴訟というと、一般的に「手間と時間がかかる」というイメージで、専門家である弁護士や司法書士しか手続きができないと思っている方も多いのではないでしょうか。実は、訴訟は自分でも起こすことができます。1円でも多く過払い金を取り戻していただくために、自分で過払い金訴訟を起こすメリット・デメリットと手順や方法などについてご紹介します。
参照:【過払い金は裁判で満額取り戻せ!】過払い金請求訴訟の流れと返還までの期間
自分でも満額回収できる!過払い金請求訴訟のメリット・デメリット
自分で過払い金請求訴訟をする場合は、かかる費用が裁判所へ納める手数料だけで良く費用を安くおさめることができますが、デメリットもあります。ここでは、自分で訴訟をする場合のメリットとデメリットをご紹介します。
自分でやる過払い金請求訴訟のメリット
過払い金請求にかかる費用を安くおさえることができる
自分で過払い金請求裁判をする場合の一番のメリットは費用を安くおさえることができることでしょう。司法書士や弁護士へ依頼すると費用が発生し、その費用はほとんどの場合、戻ってきた過払い金の中から差し引きされて過払い金が戻ってきます。
相談料 | 5000円~1万円/1時間 |
---|---|
着手金 | 2~3万円/1社あたり |
報酬金 | 2~3万円/1社あたり |
成功報酬 | 返還された過払い金に対し20%~25% |
減額報酬 | 借金の減額された金額に対し10% |
この司法書士・弁護士に支払う費用にプラスして裁判所に納める手数料が約2~3万円が必要です。過払い金の金額が少なければ、裁判所に納める手数料と司法書士・弁護士に支払う費用で過払い金が自分の手元にほとんど返ってこないということもありますので、司法書士や弁護士に依頼しない方が良いでしょう。
過払い金請求や裁判についての知識が深まる
過払い金請求の訴訟を自分で起こすには、いやでも裁判についての知識や過払い金請求や債務整理についての法律の勉強をしなければなりません。その取得した知識は、今後の人生において裁判や過払い金請求・債務整理の知識が役に立つ場面が少なからず出てくるでしょう。
しかし、知識を習得するまでには時間がかかります。知識を完璧に習得した後で過払い金請求をするとなると時効が成立してしまう危険性があります。また、知識を習得しながら裁判をするとなると、裁判官に書類の提出を求められた時や裁判期日の対応方法について知識の習得スピードが間に合わない可能性がありますので注意が必要です。
自分でやる過払い金請求訴訟のデメリット
取引履歴の引き直し計算が面倒
裁判を起こすには、まず自分に過払い金がいくら発生しているのか知ることから始めます。貸金業者から取引履歴を取り寄せて引き直し計算をしますが、引き直し計算はとても正確性が求められる作業になります。
契約した時期がかなり昔の場合は取引の履歴が途中からしか開示されない可能性があり、途中開示の場合は推定計算が必要となります。また、取引が長ければ長いほど計算する量も増えますし、貸金業者によっては一括払いとリボ払いが混在表記されていて契約内容ごとに抜粋して計算しなければならないという複雑な場合もあります。
引き直し計算が間違っていた場合、裁判の申立を受理してもらない可能性がありますので注意が必要です。
参照:【過払い金請求で損をしたくない人必見!】過払い金の引き直し計算の注意点①
訴状や準備書面の作成が面倒
相手側からの過払い金を否定する準備書面が届いたら反論する書面を作成しなければなりません。相手の主張する内容が法律的正しいのか確認したり、同じような事例の裁判判例はないのか探したりして作成します。
裁判所に提出する書類は、記入漏れや誤字脱字について厳しくチェックされ、不備があると何度でも再提出を求められますので慎重に作成する必要があります。
時間と日数がかかる
裁判が進んでいくと約1ヶ月ごとに口頭弁論期日が設定されますので、期日の都度、裁判所へ出頭します。この口頭弁論期日は、平日の昼間に設定されますので平日の昼間に仕事がある方は、期日の日は会社を休んで出廷しなければなりません。
裁判の内容によっては、解決するまでに1年以上かかる場合もありますので有給休暇を使い切ってしまう危険性もありますし、仕事への負担や影響が大きくなる可能性があります。
家族にバレるかも
消費者金融やクレジットカードで借金をしていたことを家族に内緒にされている方は多いでしょう。自分で過払い金請求をすることにより、過去に借金をしていたことが家族にバレる可能性があります。
訴訟の申立てが完了したら、解決するまで何度も裁判所や貸金業者と電話や書類でやり取りをします。書類については自宅へ裁判所名や貸金業者名が書かれた封筒が届きますので、家族に内緒で手続きをされたい方は自宅に届いた封筒を見て過払い金請求のことが家族にバレる危険性があります。
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過払い金請求訴訟の方法―必要な書類―
自分で訴訟をする場合には、下記の書類が必要となります。
- 訴状×3通
- 利息制限法に基づく法定金利計算書×3通
- 取引履歴×3通
- 代表者事項証明書×2通
取引履歴などの証拠書類は、「甲第1号証」「甲第2号証」などと呼ばれます。逆に、相手方(訴えられた被告)が提出する証拠書類は「乙第1号証」、「乙第2号証」と呼ばれます。訴状、計算書、証拠書類は各3通用意する必要があります。1つは裁判所用の製本、1つは相手方へ送る副本、もう1つは自分用の控えになります。
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訴状の書き方
過払い金請求用の訴状のフォーマットは日本弁護士連合会のホームページより入手することができます。過払い金請求の訴状の作成はとても簡単です。「請求の趣旨」と「請求の原因」の2つを書くだけです。
「請求の趣旨」とは?
請求の趣旨とは、何を目的として訴訟提起するのか、概要を端的に書きます。
例
請求の趣旨
1 被告〇〇株式会社は、原告に対し、金〇〇円及び内金〇〇円に対する平成〇〇年〇〇月〇〇日から支払い済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。 との判決及び仮執行の宣言を求める。
ここで、訴訟費用を相手方に請求する旨を記載すると、訴訟費用を相手方に支払わせることができます。
「請求の原因」とは?
請求の原因とは、過払い金請求が発生した理由です。いつ貸金業者と契約を締結したのか、引き直し計算をした結果いくら過払い金が発生したのか、原告の主張など記載します。金額や日付をカスタマイズするだけで、ほぼ、フォーマットをそのまま使用すれば大丈夫です。
訴状の正本には収入印紙が必要
訴状提出のうち1通は裁判所用の正本、もう1通は被告用の副本となります。正本には収入印紙を貼付けする必要があります。収入印紙は、訴訟提起の申立手数料であり、訴える金額によって収入印紙の金額が変わります。
訴額 | 申立手数料 |
---|---|
郵券(郵便切手)を用意
なぜ、郵券を裁判所に予納しなければならないかといいますと、原告が訴訟を提起すると,裁判所は被告に、様々な書類を送達(郵送)する必要があるからです。何度か書類を送達する必要があるので、裁判所は予想される金額を予納させています。東京地方裁判所では6,400円掛かりますが、ほとんどの裁判所で6,000円前後となっています。管轄の裁判所によって金額は違いますので、金額については、裁判所のホームページで確認することができます。もしも、裁判が長引き予納郵券が不足した場合には、裁判所より郵券を追加で納めるよう指示があります。逆に、書類の送達回数が少なく解決した場合には、余った予納郵券は原告へ返却されます。
代表者事項証明書を用意
過払い金請求の裁判は、相手方が法人(企業)になるので、申立時に「代表者事項証明書」の提出が必要です。代表者事項証明書は、誰でも申込書を記入することによって、最寄りの法務局で取得することが可能です。手数料は600円です。
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過払い金請求訴訟の手順
第1回目期日に出廷
訴状を裁判所へ提出すると、第1回期日が裁判所から指定されます(概ね1ヶ月程度後の日付)。この際に、相手方より「答弁書」という相手方の主張が記載された書面が届きます。この主張を反論するために、「準備書面」を作成して裁判所へ提出します。 期日は平日に指定され、決められた時間に決められた法廷へ行きます。第1回期日はお互いの主張の確認が主な内容になるため、30分もかからず終了します。
第2回期日以降の手続き
第2回期日以降も同様の流れとなりますが、内容はお互いの主張を展開することになります。この主張を準備するために、準備書面を用意します。実際には、次回期日までに準備書面を提出するよう裁判所より指示を出されることが多いです。
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準備書面の書き方
準備書面の内容は、訴状に書き落とした内容や追加したい内容、相手方の主張についての反論を書きます。「主張」と「証拠論」を切り離して書いた方が、分かりやすく裁判官に喜ばれます。主張とは自分の言い分であり、これに対し、証拠論とは、証拠説明といってその言い分を裏付ける資料を説明して、言い分が正しいことを納得させようというものです。準備書面の通数も訴状などと同様で、裁判所用の正本1通、被告用の副本1通を提出します。
裁判の和解方法
最終的に裁判所に判決を出してもらうことになりますが、返還金額に折り合いがつけば、判決が下りるまでに和解が成立することがあります。
裁判上の和解について
裁判上の和解は主に3種類あります。
- 受諾和解(地方裁判所)
- 和解に代わる決定(簡易裁判所)
- 17条決定
受諾和解・和解に代わる決定とは?
「和解に代わる決定」は簡易裁判所のみの取り扱いです。地裁で似たような処理をするときには、「受諾和解」が利用されます。当事者が遠隔の地に居住していること、その他の事由により出頭することが困難であると求められる場合において、その当事者があらかじめ、裁判所から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が口頭弁論終結等の期日に出頭してその和解条項を受諾して和解をすることです。
17条決定とは?
本来であれば、口頭弁論期日に原告と被告は出廷しないといけません。しかし、当事者同士が返還金や返還期日について合意している場合は、被告が出廷しなくても裁判上の和解を成立させることができる制度です。
判決とは?
何度か期日に裁判所へ出廷し話し合いをしますが、それでも和解条件の折り合いがつかなかった場合は、裁判官が判決を下します。判決後、相手方から控訴されなければその判決は確定し、裁判は終了です。
控訴とは?
第一審(最初の裁判)で判決が下されたが、その判決の内容に納得ができない場合に、裁判のやり直しを申立てることができる制度です。取引の分断や消滅時効などの法律上の争点があるために控訴を申立てる貸金業者もありますが、単に、時間の引き延ばし目的で控訴を申し立ててくる貸金業者も一部あります。
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まとめ
過払い金請求の訴訟は自分でおこなうことができますし、専門家である司法書士や弁護士に依頼することもできます。 自分で裁判を申立てる場合も司法書士や弁護士に依頼する場合もそれぞれメリット・デメリットがあります。
過払い金請求の相談を無料で受け付けしている事務所もありますので、まずは無料相談をしてみてどちらの方法が自分にとって最適なのか検討されると良いでしょう。
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※1 2009年8月掲載
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